営業DXとは?注目される背景や成功事例とあわせて紹介

さまざまな業種でDXが推進されているなか、営業部門でも「営業DX」が求められています。営業というと対面での接客・商談が多く、そのための移動も多いイメージがありますが、営業DXはどのように推進されるのでしょうか。本記事では、営業DXの意味やメリット、現状と課題を紹介するとともに、成功事例を紹介します。

営業DXとは

営業DXとは、営業部門でDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進することです。デジタル技術を活用することで効率的な営業活動を実現し、顧客へ新しい価値を提供することを目指します。DXについては、次の記事も参考にしてください。

【徹底解説】DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?必要性から成功事例まで

営業DXが注目される背景

営業DXが注目される背景には、下記の社会的変化があります。

  • 顧客ニーズの多様化

以前は、消費者はテレビや雑誌などの特定のソースからしか情報を得られませんでした。しかし、インターネットの普及によりオンラインでの購買やSNSを用いた情報収集が一般的となり、顧客の活動範囲が広くなったのです。この変化に伴い、企業が提供する商品やサービスも不特定多数に向けたものではなく、よりパーソナライズされたものが中心となりました。

また、場所を選ばないオンラインでの接客・商談を希望する顧客も、従来に比べて飛躍的に増えています。これも、近年顕著な顧客ニーズの多様化のひとつといえるでしょう。

これらの多様なニーズに対応するためには、営業活動の効率化や変革が必要です。そこで、営業DXが求められているのです。

  • 企業の競争激化

競合他社との差別化が困難になり、営業成績の低下や顧客離れにつながるリスクがあります。営業DXの本質は、単なるデジタルツールの導入ではなく、デジタル技術を活用した営業プロセスの抜本的な変革です。具体的には、顧客データの分析によるニーズ予測、AIを活用した最適な商談提案、オンライン商談ツールの活用など、デジタル技術を駆使して営業活動の効率化と高度化を図ることを指します。

仮に営業DXに取り組まないままであれば、自社の営業モデルが時代に取り残され、市場での競争力を失う可能性も考えられます。

  • 働き方改革への対応

顧客ニーズの多様化と並ぶ重要な社会的変化として、労働人口の減少や働き方のニーズの多様化があります。政府も多年にわたってテレワークを柱とする「働き方改革」を推進しており、営業部門でも対応が必須となっています。

営業DXがもたらすメリット

営業DXが企業にどのようなメリットをもたらすのかを紹介します。

デジタル化による営業活動の生産性向上

営業活動で得られたデータをデジタル化して管理・分析することで、営業活動をより無駄なく戦略的に変えていくことが可能です。

また、オンラインで営業活動ができるため遠方の顧客に対しても移動時間なしで営業ができるようになり、メール機能やSNSを活用することで顧客との情報共有もしやすくなります。

営業DXは担当のスケジュールや商談の進捗状況などの社内情報も、デジタル上で管理可能にします。その結果、マネジメント層は部下の状況を確認しやすくなり、効果的な指導や指示が可能となります。

顧客エンゲージメントの強化

営業データのデジタル化によって、購買情報や問い合わせ履歴といった顧客情報の収集や分析が可能です。将来的なニーズや課題を顧客ごとに把握できるようになり、それぞれの顧客にパーソナライズされた営業活動を行えます。それによって顧客エンゲージメントの強化が期待でき、継続契約や新規契約の可能性も高まるでしょう。

属人化解消による営業担当者全体の能力底上げ

従来のやり方では、顧客の情報は担当者だけが把握していることが多く、営業活動におけるノウハウも共有されませんでした。営業DXが実現すれば、担当者が持つ顧客関連情報や日々の活動から得られたノウハウをデジタルデータとして一元管理し、社内で共有できるようになります。担当者が独占していた情報やノウハウを営業部門全体で活用できるようになるため、組織全体で営業力を底上げできるのです。

営業DXの推進に関する現状と課題

さまざまな業界で求められており、メリットも多い営業DXですが、現在は多くの企業で進んでいるとは言い難い状況です。営業DXが進んでいない現状と、特に現場目線での課題について紹介します。

営業DXに対する理解不足

前述のように、DXは単なるデジタル化とは一線を画すものの、この理解が不十分なことから、既存業務のIT化がDXであると勘違いすることがあります。DXはビジネスモデルの変革を目指しており、IT化はDXを実現するひとつのステップにすぎません。DX推進ツールはさまざまな企業から提供されていますが、導入することが目的化してしまったり、データのデジタル化だけで終わってしまったりしないよう、注意が必要です。

導入にむけた準備が不十分

営業DX実現のためには、人の手で処理されている作業やアナログのデータをデジタル化するといったステップが必要です。しかし、これはIT担当者だけでできるものではなく、現場の営業や事務の担当者に協力してもらわなくてはいけません。その一方で、日々の業務に追われている現場の担当者からすれば、慣れている方法を変えなくてはならず、一般的にこうした変革に消極的になりがちです。DX推進によって現場が得られるメリットを事前に十分に説明し、現場の協力が得られる環境を整備することが欠かせません。

また、DX推進ツールを導入しても、事前の調査が不足していたために、自社に適していないツールを選んでしまうこともあります。評判や目先のコストだけで判断することなく、自社がDX推進ツールに求めることを明確にしたうえで、ツールの仕様を確認して決める必要があります。

DX推進ツールの継続運用ができない

DX推進における課題はツール導入後にもあります。社内の理解や実際に作業する担当者への教育が不十分であることから、導入後にツールが使われなくなってしまうというケースです。先にも述べたとおり、DX推進には現場の協力が不可欠なので、社内にツールが浸透するよう教育しなければいけません。

また、IT人材の不足により、DX推進ツールが継続して運用されないこともあります。IT人材は、社内でDX推進をけん引する重要な人材ですが、ほとんどの企業でDX推進が喫緊の課題になっている近年、人材獲得の厳しさは増しています。十分な社内教育を行って人材を育成するとともに、必要に応じてアウトソーシングを活用するのもひとつの手段です。

営業DXを実現させた成功事例

最後に、営業DXを実現させた事例を紹介します。

オフィス関連IT企業:AIを活用して営業プロセス全体を最適化

あるオフィス関連のIT企業は、営業サイクルの各段階でAIを効果的に活用しています。訪問先の選定から仮説立て、商談、契約・納品、そして顧客との信頼構築に至るまで、AIが様々な形でサポートを提供します。例えば、最適な見込み客の提案、業界動向の分析、効果的な商談戦略のアドバイス、納品後のフォローアップタイミングの提案などが含まれます。また、スマートフォンアプリのAIを営業アシスタントとして活用し、日常業務の効率化も図っています。営業活動の効率化と質の向上、顧客ニーズに合わせたより適切なソリューション提案、データ駆動型の意思決定プロセスの確立、そして顧客満足度の向上を実現しています。

機械部品メーカー:営業の無駄をなくすことでユーザー数増加

ある機械部品メーカーでは、顧客フォローに偏り・抜け・もれなどの無駄が生じる課題を解決するため導入したのが、「The Model」という営業効率を最大化するプロセスモデルです。営業体制の分業化や、情報の数値化・可視化による業務標準化や情報の一元管理を実施することで、営業活動における無駄を排除しました。また、各プロセスの担当部門が連携して顧客満足度の向上につとめたことで、ユーザーの大幅な増加を達成しました。

通信インフラ企業:インサイドセールスの体制構築による受注額増大

ある通信インフラの企業は、当初、商品・サービスを購入する可能性のある顧客を獲得する部署が、その顧客を営業部門に引き渡し契約につなげる体制をとっていました。しかし、営業へ引き渡した顧客のなかには、興味を持っただけの顧客や将来購入を考えているだけの顧客もおり、契約にまで至ることは限られていました。そこで、営業部門とは別に、顧客の獲得から新規契約までを担うインサイドセールスの専門チームを設立しました。蓄積された膨大な顧客データから顧客動向を分析し、インサイドセールスを実施することで、顧客に合わせた効率的な営業活動を実現しました。その結果、顧客獲得、新規契約ともに大きく増大させることに成功しました。

営業DXにより企業の競争力強化が期待される

顧客ニーズの多様化、企業間の競争激化、働き方改革への対応を背景として、営業活動にもDX推進が必要とされています。営業プロセスを大きく変えることもあるので、当事者からすると抵抗を覚えることもあるでしょう。しかし、DXは事業環境の激化に伴い必須の施策であり、営業部門も例外ではありません。今後、企業が生き残るためにも、営業DXは重要といえるでしょう。

ユーザックシステムでは、さまざまなDX推進をサポートするツールを提供しています。営業DXに効果的なツールもあるので、ぜひ一度ご相談ください。

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